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ののじの代表作を生み出してきた
ものづくりの神髄を知る生粋の職人

「やっぱり作るのが好きやっけ、俺さ。」

そう言って顔にシワを寄せて笑うのは、職人歴55年で御年79歳(2022年取材当時)の児玉幸男さん。
新潟県燕市にある木造1階の小さな工房で、ずっと一人で仕事をしてきた。

「人を使うとか、工場を拡張しようなんて気持ちは微塵もなかったね。やりたい事、やりたい仕事を選んでやってきたわけだ。」
壁や柱にはオーダーを受けた製品の寸法などを記したメモが残され、年季の入った機械が並ぶ工場内にはノスタルジックな空気が漂う。

児玉化工から、日本のものづくりの原点を垣間見た。
24歳で金属加工の道に入り、30歳で独立。
現在は燕の主流となっている器物だが、児玉さんが職に就いた頃は器物を手掛ける職人は珍しかった。
ゆえに、注文を受けて作るというやり方ではなく、みずから提案して仕事を獲得してきた。

そんな児玉さんの発想力・提案力は、まさに発明家の域。ののじのロングセラー商品である「ののじ 爽快ソフト耳かき」や「ののじ 角質こそぎ粉雪さん」も、児玉さん無しでは誕生しなかった。
「だいぶ昔の話だけど、ののじさんの事務所に行ったら、先代社長からワイヤー構造の耳かきは作れねぇかと相談されてさ。そんな小さなもん今まで作ったことなかったんだけど、まぁできるかどうかわかんねぇけどやってみようってことで。」

児玉さんは専用の機械を作るところからスタート。
試行錯誤を重ね、3か月後には生産できる状態にまでもっていった。
晴れて発売すると「ののじ 爽快ソフト耳かき」は爆発的ヒット。
ピーク時は月産10万本を数えた。

ののじ耳かきシリーズは児玉さんとののじが二人三脚で生み出したマスターピースであることは間違いない。
さらに「ののじ 角質こそぎ粉雪さん」も「ののじ 角質こそぎ・めっちゃトレ」も、児玉さんと二人三脚で生み出したアイテムだ。

「ののじさんにはいっぱい厄介になりましたよ。「ののじ 角質こそぎ粉雪さん」もね、角質を粉状にこそぎ取るブレードを作るのに苦戦してね。ピラミッド形状にするためには金型を作るんだけど、1万~1万5千個くらい抜くと金型がダメになっちゃう。摩耗からは逃れられねぇんですよ。でも品質を下げるわけにはいかねぇから、いろいろ考えましたよ。「ののじ 角質こそぎ・めっちゃトレ」も、丸刃がギザギザになってるのがポイントなんだけど、細かすぎて特許庁の審査官が見落としてね。虫眼鏡でちゃんと見てくれって再申請してやっと気づいてくれて、無事に特許が下りたって話だよ。」

みずから金型を作り、試行錯誤を重ね、「よりいいものを作る」ために手を動かし、頭を働かせてきた児玉さん。
この道に入って55年間、趣味のゴルフ以外はほぼ休んだことはないと言う。

「休みの日は金型作りですよ。さっき話したもののように成功することもあれば、失敗することもある。それを繰り返してきて、気が付けば50年以上経ってた。やっぱりね、この仕事が好きなんです。それしか道がないもんで。目覚めたら仕事の事しか考えてないですよ。」
激動の時代を生き抜いてきた、生粋の職人。

取材の終盤、児玉さんは嬉しそうにこう話してくれた。
「ののじの商品じゃないんだけど、今ね、まだ誰も作ったことのないワイングラスを作ってるんだよ。ここまで来ると、世の中にないものを作りたいからね。」

1、2日々機械の前に立ち、ものづくりを続けてきた児玉さん。
今でも新たなアイディアが閃く。

3「ののじ 角質こそぎ粉雪さん」のフジツボ型メタル・クラウン・ブレードの金型。彫金師に彫ってもらうなど、児玉さんの創意工夫が金型ひとつにディテールに凝縮している。
4児玉さんが手掛たののじ商品は、写真の「ののじ 爽快ソフト耳かき(かため)」ほか、「ののじ 角質こそぎ粉雪さん」と「ののじ 角質こそぎ・めっちゃトレ」の3商品。

(取材:2022年1月)

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