ののじの耳かきシリーズを担う
「バネというものは、金属に限ったものではないんです。プラスチックのバネもあれば、何でもある。形状も多種多様で、車にはバネが約3800個くらい付いているんですよ。」
そう教えてくれたのは、ののじの耳かきシリーズの生産拠点である「MMK」代表取締役会長の太田健矢さん。
バネ製造の会社で26年間勤めた後、独立。その知見や人脈を活かし、ののじの耳かきを手掛けることになった。
「ご相談を受けたときは、できますと即答しました。ただし、ののじさんの耳かきは作るのが非常に難しいことは最初からわかっていました。ワイヤー形状ですからね。実際に物になるまでは、1年以上かかりました。」
それまでMMKは機構部品を中心に製造していたので、いわゆる見立ては要求されない仕事だった。
しかし、ののじが求めるのは、モノとしての美しさ。
その要求とのギャップを埋めるまでに苦労したそうだ。
「あとは、どうやったら同じものを数多く極力コストをかけずに生産できるか。その生産ラインを確立するまでも試行錯誤を重ねました。ののじさんの耳かきは金属棒をプレスことで、この形状になっています。しかし、普通の材質ですと、プレスすると割れてしまう。材料メーカーと何度も打ち合わせを重ね、現在の材料にたどり着きました。」
MMKは「ののじ 爽快ソフト耳かき」をはじめとする3連ループワイヤ耳かき、「ののじ 耳かきマルチキャッチ」、「綿棒耳かき」など、ののじの耳かきの大多数を生産。
「綿棒耳かき」に関しては太田会長のバネ製造の経験を応用し、絶対に抜けない構造を実現させた。
「ののじさんの耳かきシリーズは、先端が抜けてしまったら大きなクレームになります。『綿棒耳かき』に限らず、抜けないように作ることが私たちの使命。そこは100%努力しています。」
耳かきの柄になる金属棒は、どうしても穴の中にバフの粉が入ってしまう。
そのままだと接着剤が機能せず、先端が抜けてしまうリスクがある。
これを避けるために製造工程の最初にエタノール洗浄を実施。
機械ではなく1本1本が手作業だそう。
しかも、2回洗浄という念の入れようだ。
「あとは、使用中に折れないことも重要です。私どもは繰り返し試験を実施しているので、10万回やっても折れないというエビデンスがあるのですが、それでも折れてしまうケースが出てくる。私は長くバネの会社にいましたから、破断面を見れば、どういう原因で折れたかというのが大体推測つくんです。それを証明するために、神奈川県工業試験場で破断面の写真を撮っていたき、それを分析してきました。その結果、折れてしまう原因はすべて疲労破壊であることがわかりました。」
10万回の耐久性があれば、毎日10掻きしたとしても、約27年間は折れないという計算。
品質としては十分だ。他にもMMKが誇るのが、その厳しい検品体制だ。
「表面の外観検査も非常に厳しくやっております。検査員は目のいい人を揃えていますので、ちょっとした傷も見逃しません。工程ごとに検査を行っているので、チェックを漏れて不良品が市場に出回ることはないと断言できます。事実、異物混入などのクレームや返品は一度もありません。外観検査に関しては、日本でもトップクラスを自負しています。」
MMKがののじの耳かき1本を仕上げるまでには、約20日間かかる。
高品質なものづくりを徹底し続ける、その原動力とは何か。最後に太田会長が答えてくれた。
「他よりもいいものが作りたい。その一心です。」
1、2ののじの耳かきシリーズを手掛けるMMK。
洗浄工程から組み立ての工程まで、すべての工程で外観検査を実施している。
3、4何重ものチェック体制をひいているので、不良品が市場に出回ることはない。
「私どもが最終チェックですから、お客様以上に厳しくやらないといけません」と太田会長。
ののじの耳かきシリーズ以外の商品も、MMKの厳正なる検品を経ることで品質を担保している。
(取材:2022年1月)